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「失敗に学ぶ中心市街地活性化」
「失敗に学ぶ中心市街地活性化」
「失敗に学ぶ中心市街地活性化」
~英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例~

ちょっと前に、「失敗学のすすめ」という本が結構売れた。実は私も買って読んだが、とても面白くわかりやすかった。なにせ、「あぁ、私もそういえば、そんな経験があったなぁ」と感じられるものだったが、残念ながら、この本には「失敗から学ぶ」という意味での分かりやすさはない。きっといろんなところに気遣いながら書いているので難しいのだろう。仕方ないので、私が代わってハッキリ解説しておきます(笑)。



失敗1・優秀で、意欲のある人が、関わっていない。
制度や仕組み、組織の在り方を示して、PDCAサイクル、などと言っても、それを知ったところで、使いこなして解決策を描ける人が中心市街地に関わっていないという事実である。著者達のような「専門家」は、現場ではなんだか頼りなく、名刺に「専門官」などと書かれている役人は、単に「補助金申請チェッカー」なだけ。要するに、「知識や経験を生かしてシナリオを描き、それを実行に移せる人」がいないことが「失敗」なのだ。実例では「タウンマネージャー」らしき人に多少のスポットを当てているが、「敬意」は示せても、彼らの仕事と能力への評価には、ためらいが感じられる文章のタッチだ。既にあちこちで聞かれるイギリスの話を書くなら、せめて「人材育成」にスポットを当ててほしかった。

失敗2・都市計画と商業高度化の目線で活性化を考えると、後々大変なことになる。
 長野の服部さんが、「集客核は、中心市街地のシンボルとなれることが重要であり、その施設や事業の規模は問題にならない」と言っていたことが引用されている。しかし、そうは言っても、一般的な視点や切り口は相変わらず、「図面に大きな丸を書くこと」に象徴されるような都市計画的な大規模な開発手法になりがちだ。「点から線、線から面」も、「中活法の制度や仕組みを使って」と前置きが付けば、やはり同じ失敗を繰り返す危険性があるということを知っておくべき、ということだろう。章立てした事例より、終章あたりで少し触れられている小さなまちのまちづくりから、成功のイメージを学んだ方が良さそうだ。


失敗3・ライバル・競合相手を意識せず、プランを練ることは、まずい。
 「個性」「差別化」「マーケティング」と最近はよく言われるようになった。いいことだと思うが、そこから導き出されるシナリオや取り組みは、案外、地区の良いところの単純延長や「できること」の羅列になりがちだ。中活法の計画は「行政計画」のため、やっぱり最終的には「補助を得るため」のツールで、「戦略的プラン」にはなりにくい。だから、先に、ライバル地区やショッピングセンター等との関係を整理したうえで、戦略や主たる手法を、民主導でシナリオを書いてから、「行政計画」づくりを後でした方が、失敗をさけられる。

誤解のないように書いておきたいが、今の中活法が何を背景に生まれ、本来、どんなところを目指すべきで、それにチャレンジしようとしている地域がある、ということをコンパクトにまとめた、という意味では、良書だと思う。ただ、唯一で最大の「失敗」は、この本のタイトル、「失敗に学ぶ」というところがボヤけたことだと思うので、既に買った方もこの「3つの失敗の本質」を頭の隅に置いて読み直してみると、行間から感じられるものが多い本なのです。


(2009年1月23日):書評:まちづくり